現在は30代の男性です。当時は30になる前だったでしょうか、会社の帰りに毎日のように通っている雀荘がありました。関西ですので3人うちのフリーです。日々、勝ったり負けたり終電になるまで遊んでいました。いつのまにやらすっかり常連になり、他の常連さんとも仲良く会話するくらいになっていました。よく同卓するサラリーマン男性がいたのですが、なかなかに手ごわく、良い対戦相手でした。お互いに手筋を探り、押したり引いたり、白熱した麻雀を繰り返していました。ある日のこと。いつもと同じように卓につき、牌を並べて打ち出します。するとその日は相手の手筋が見えるのです。繰り返し繰り返し打ったためでしょうか、相手の手牌がどの辺にどの種類が固まっているか、どんな並べ方をしているか、なんとなく感じることができたのです。その雀荘では金の牌が混じっており、祝儀対象でした。ある局で、序盤にその金の牌(7ソウ)がその男性から切り出されました。その瞬間、まだ完成してもいない相手の手牌の待ちが一点読みでみえました。間8ソウ。その直感に従い、8ソウを無理やり残しての七対子。3人うちでは同一牌4枚使いの七対子が認められています。みるみる集まる8ソウ。全ての8ソウを使い切り、その相手のリーチをかいくぐって、直撃を取りました。ドラを絡めて跳満の手だったかと思います。「あ、なにかが完成したな。」そんな気持ちでした。相手は苦笑いでした。「嫁さんより俺のこと知ってるね。」それからは、なぜか徐々にその雀荘に足が向かなくなりました。そのゲームで完成したものを壊してしまわないよう、もう触りたくなかったのかもしれません。その後、転勤によりその雀荘から完全に離れました。数年後、再転勤で戻ると、同じ場所に雀荘はありましたが店は変わっており、そのお客さんもいませんでした。完全に思い出になってしまったのだな、と少しさびしく感じました。いまでもその時と同じ感触には至っていません。
30歳 男性 3人打ち雀荘にて
